そこから流れる血は紅く。


空ろな身体が、彷徨う。
求めるものは、何処にも無い。
形は、壊れるだけ。
輪郭は、溶けるだけ。


解けてしまう約束を、指に絡める。
それも、また、無駄なこと。
言葉を、声を、望んだところで。
溢れ零れて、消えてしまう。


刹那を、永遠にと、願った。
全て、通り過ぎてしまうから。
変わらない、それは、拷問に近いこと。
ひとりぼっちと、孤独の相違。


逢えば、失うのだろう。
裏切られたと言って、傷付けられたと言って。
それでも、私は、受け容れるだろう。
何度でも、何度でも、何度、でも。


貴方は、何処にいるのだろう。
名前を、そっと、呼ぶけれど。
貴方の耳には、届かない。
失う約束、それだけが、色鮮やかに刻まれる。



06/16 15:04 | 重ねる言の葉 | CM:0
己惚れ遊戯。


貴方の「あの人」は、私、だろうか。
口ずさむのは、擦れた旋律。


私が「私」を、見詰めて俯く。
「私」が私を、見詰めて微笑む。


貴方の誰かが微笑んで、貴方は誰かに微笑むだろう。
それが、誰であるか等、何故、私が問えようか。


貴方の「あの人」は、誰、だろうか。
口ずさむのは、知らない音楽。


手を伸ばしても、届かない。
「あの人」の影、ただそれにすら、届かずに。



06/16 13:56 | 重ねる言の葉 | CM:0
密やかなれど。


月の光が、滴る。
手を伸べて、掬う。
指の間から、零れる。
嗚呼、貴方が、消えてしまう。


見たかったのは、夢の続き。
何処までも続く、眠り。
死は、不可知だから、死。
生は、過去も未来も無いから、生。


寄る辺無い幼子の、影。
幻と嗤うには、濃過ぎる悲哀。
淋しいと、貴方の声がする。
その涙に、触れて、抱きたい。


季節が、廻る。
祈りは、消えない。
貴方の名前を呼ぶ者は、いる。
変わらずずっと、貴方の、名前を。



06/06 09:13 | 宛名の無い手紙 | CM:0
目蓋に降る雨。


雨の日には、いつも。
いつしか揺れる視界が、音すら歪める。


こんなときに、と、思う。
こんなときに、貴方からの手紙が届けば、と。


微かな祈りの声は、か細い理性の悲鳴に似る。
雨の音に、感情が、溶けてしまう。


貴方の、今の声が、聴きたい。
今、貴方の声が、聴きたい。


大切で、大切で、大切で。
それでも、私はいつか、貴方を失い、泣くのだろう。


貴方は、私を、失くさない。
優しい雨が胸に刺さって、柔らかく深い創を残す。




05/25 15:20 | 夜の雨 | CM:0
硝子の眼で。


初めて、だろうか。
嘗ての先輩、の、夢を見た。


そのひとの佇まいが、とても好きだった。
瞳で、追うだけ。
優しい微笑と、冷たい横顔。
低めの身長、細い線、色素の薄い肌、光に透ける髪と瞳。
最初の記憶の通りの、長めの前髪。


印象、だけ。
それだけが立ち現れたかのような。
そんな、幸福な夢、だった。
その証拠に、私は、現在の私であり、当時持ち得なかったものを、胸に抱いていた。


そのひとは、相変わらず、ジャンクフードを食べていた。
容姿と、食べ物の、ギャップ。
食べ終わると、行こう、と、立ち上がった。
差し出された腕を、思わず取ってしまう。
ふいの、言葉。
「いい、匂いがするね」
笑顔。
「この匂いで誘惑するんだね。引っ掛かりそう」
神社には、木々、池、それを取り囲む、あらゆる生き物の、彫像。
時を止められた者たちを、天の遣いが不思議そうな顔をして覗き込む。
いいですよ、という、言葉が浮いた。
「うん、じゃあ、あっちへ行こう」


綺麗な、顔。
私は、許しを得て、今、このひとといるのだと、思う。
天の遣いが、泣きそうな顔をする。


途切れた夢の余韻は、幸福なものだった。
私は、そのひとの佇まいが、とても好きだった。
瞳で、追うだけ。
恋慕でも、憧憬でも、なく。
とても、とても、好きだったから。


綺麗な、ひと。
大切な、その、女の子と、私は、仲良くなりたかった。




05/11 09:50 | 硝子の宝箱 | CM:0
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