雨が硝子の破片なら。



雨に揺れる視界。
伝う雫が涙を隠す。
濡れた身体が貴方を欲しがる。

繰り返す、雨垂れの旋律。
冷たい硝子に頬を寄せる。
終わらない旋律が、調律を失う。


消えないものが欲しかった。
終わらないものが欲しかった。

そんなもの、在りはしない。


会うのは賭けだろう。
触れるのは禁忌だろう。
踏み越えてくれるのは奇跡だろう。

繰り返す、雨垂れの旋律。
それは幻聴。
早く、終わって消えてしまえば良い。


早く、私が消えて終われば良い。




05/30 10:11 | 重ねる言の葉 | CM:5
聞こえないまま。



零れ落ちる想いに、言葉が溺れる。

私は何も語れずに深く沈み、水面の遥か上の月に、ただ、希う。





雨に、貴方を、想う。

貴方、だけ、を。




05/29 10:29 | 一枚の夢 | CM:0
梅雨寒に。



雨が、暗い酸性雨が、髪を、肌を濡らす。
溶けて消えてしまいたいと、感情が云う。
理性が嗤い、冷たい刃に指を伝わせる。


首筋に、這うのは。
貴方の幻影か、過去の遺恨か、誰かの熱か。

瞳を、奪うのは。
世界の陰影か、現実の色彩か、真実の響か。


目蓋を下ろし、天を仰ぐ。
長い雨が、続くと云う。
永遠が、雨に混じって気配を報せる。

清涼と湿潤が、身体に浸みて精神を蝕む。
それでも、立ち尽くしたまま。
貴方の傍にと、祈るような、願いを抱いて。




05/27 13:52 | 重ねる言の葉 | CM:0
血の色をした。



鮮やかな生命力が、自我を狂わせる。

本能を裏切って、欲望と心中。

ほら、傷付けて、みせて。





慰みの夜には、祈りと同じ数の涙。

枯れた数だけ集めた薔薇を、束にして。

瞳を開けている私の柩に捧げて、蓋をする。





声が、聞こえないように。

私が、傷付かないように。

そして、傷付けるように。




05/26 16:55 | 重ねる言の葉 | CM:2
棘の柩。



貴方の、痛みを。
誰をも拒絶しながら、救いを求める空白を。
己の非力を知り、手を伸ばす無意味さを知りながら、それでもせずにはいられない。



苦しみは、貴方だけのもの。
それでも、貴方と云う存在は。
決して、貴方だけの、独立したものではない。

貴方は、賢過ぎるのだろう。
自覚、故に、悲痛な覚悟。
其処に、どうか。
微かにでも、届くのなら。



大切な、貴方。
私にとって、貴方は―――。
例え、何度跳ね退けられても、私は貴方に、手を伸ばす。
貴方の拒絶が、私個人に向けられない限りに於いて。
貴方の空白の声が、満ちて消えるまでの間。
耳を澄まし、眼を開き、この身体の、終わる時まで。




05/25 14:04 | 硝子の宝箱 | CM:2
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